正体候補として最もよく挙がるのは、かつて放流されたチョウザメが巨大化したという説だ。ほかにアオウオやソウギョといった大型魚を挙げる声もあり、懐疑派なら波や流木の見間違いと言うだろう。ただしチョウザメ説は、いつ誰が放流したのか、紹介記事をいくら読んでもはっきりしない。
どの説を採っても、最後にあの数字が立ちはだかる。体長3メートルなら、巨大魚説でもまだ説明がつくかもしれない。だが30メートルとなると話は別だ。そのうえ土産物に描かれたモッシーは首長竜の姿だったそうだ。目撃証言は魚、写真はワニ、グッズは首長竜。この怪獣は、語り継がれるほど姿を変えてきた。
近年、この湖で本物の“想定外の大型魚”が見つかっている。2022年11月、釣り人が釣り上げた魚が北米原産のレイクトラウトだと確認されたのだ。国内では栃木県の中禅寺湖に続く2例目である。県水産技術センターが1年かけて刺網を26回仕掛けたところ175尾が捕れ、最大のものは全長92.5センチだった。大きさがまちまちなことから、すでに湖の中で自然繁殖が進んでいると強く疑われている。つまり本栖湖は、1メートル近い肉食魚が相当数すみつき、繁殖まで進んでいても、釣り人の竿にかかるまで誰も気づかないほど深い湖だった