在日朝鮮人らを対象にした「帰還事業」で北朝鮮に渡り、その後に脱北した4人(遺族含む)が、現地で劣悪な生活を強いられたとして北朝鮮政府に計4億円の損害賠償を求めた訴訟の差し戻し審判決で、東京地裁は26日、帰還事業の違法性を認め、北朝鮮に計8800万円の賠償を命じた。
東京地裁判決を受けて原告で脱北者の川崎栄子さん(83)が記者会見し、「感激している。司法が訴えに真摯(しんし)に向き合ってくれた」と喜んだ。
1942年に在日朝鮮人の両親の元で生まれ、「地上の楽園」との宣伝を信じ、「帰国船」で60年に北朝鮮に渡った。17歳の春だった。だが、飢饉(ききん)が起これば、餓死した遺体が街にあふれた。現地で結婚し、男女5人の子どもをもうけたが、食べさせるのはいつも水ばかりのおかゆ。外で捕った虫を口にすることもあったという。
2003年に中国との国境から脱北した。子どもたちを連れ戻す予定でいたが、現在もかなっていない。川崎さんは記者会見で「帰還事業は北朝鮮と日本政府の協定によって進められ、日本政府にも一端の責任がある。家族が再会するために日本政府に動いてほしい」と望んだ。賠償金の回収については「北朝鮮は知らん顔するだろうが、(北朝鮮の財産を差し押さえる)強制執行で痛みを与えるしかない」と話した。
原告側代理人の福田健治弁護士は「北朝鮮で人権侵害を受けた原告に対し、裁判所は最大限の評価をしてくれた」と話した。