実はビュアッシュの地図には複数のバージョンが存在し、ある版では問題の南極大陸がまるごと消えてしまっているのだという。これは、彼自身がその大陸を確定した事実ではなく、検証途上の仮説として扱っていたことを物語る。
さらに当時のヨーロッパには、南半球に巨大な陸地があるはずだという「南方大陸(テラ・アウストラリス)」の観念が広く共有されていた。未知の南に大陸を描くこと自体は、決して突飛な発想ではなかったのだ。
学術的な分析は、これらの地図を、断片的な情報源と積み重なった誤り、そして想像による復元の産物だと結論づけている。神秘の知識ではなく、限界と野心が同居した啓蒙時代の地図学が生んだものだ、というわけである