UFOや地球外生命の話題が世界の見出しをにぎわせるなか、あるデータによれば、いまやアメリカ人の実に10人に1人が「UFOを見たことがある」と答えているという。 だが、夜空に浮かぶ正体不明の光が、必ずしも宇宙からの来訪者とは限らない。よくよく調べてみると、その多くは拍子抜けするほどありふれたモノだったというオチが少なくない。 今回は、世界中で「宇宙船だ!」と騒がれながら、最終的にごく平凡な正体へと行き着いた9のケースを紹介しよう
金星 1966年4月17日の未明、米オハイオ州ポーテージ郡の警官たちが、低空を漂う輝く物体を約13キロも追跡した。州境を越えてペンシルベニア州まで走ったというから執念だ。だが有力視された正体は、明け方に輝く金星だった
月 2011年、イングランドのある男性が「巨大な光が空で燃え、静止している」と緊急通報した。ところが数分後に折り返し電話をかけ直し、あれは月でしたと告げたという。落ち着いて空を見上げることの大切さがわかる一件だ
レンズ雲 高い山の上に湿った空気が閉じ込められると、丸みを帯びた円盤状の「レンズ雲」が単独でぽつんと現れることがある。2023年にはトルコ北部ブルサの町で、夕日に赤く染まった巨大なレンズ雲が空に浮かび、UFO騒ぎを巻き起こした
球電 2006年、オーストラリアのブリスベンで、流星群の夜に緑色の光が転がるように空を移動した。正体は「球電(ボールライトニング)」とみられる、極めて珍しい大気現象だ。滅多に見られないからこそ、目撃者が異星の乗り物を疑うのも無理はない
スペースXのロケット排気 2025年3月、英国の星空観測者たちが、一点の光を中心に渦を巻く奇妙な物体を報告し始めた。異星の宇宙船ではない。正体はスペースX社のファルコン9ロケットが放った、凍りついた排気プルームだった。人類の宇宙進出が、皮肉にも新たなUFO誤認を生んでいる
グッドイヤーの飛行船 2020年、米ニュージャージー州で葉巻型のUFOが目撃された。だが、その正体はアメリカン・フットボールの試合上空を飛んでいた、タイヤメーカー・グッドイヤーの宣伝用飛行船だった。宇宙船と広告塔を見間違えるとは、なんとも人間くさい
宇宙飛行士の“落とし物” 2015年、国際宇宙ステーション(ISS)から周囲に光る粒が漂うのが観測された。神秘的だが、正体はロシアの宇宙船から漏れ出て凍りついた尿の粒だったという。壮大なUFO誤認が排泄物とは、宇宙のロマンも形なしだ
虫 2011年、米コロラド州デンバーで、カメラに正体不明の物体が次々と写り込む「マイル・ハイの怪」が話題になった。だが検証の結果、レンズ近くを飛ぶただの虫だったと判明した。デジタル時代ならではの“ご近所UFO”だ
てんかん発作 1979年11月9日、スコットランドのデックモントの森で、ロバート・テイラー氏が異星の存在との遭遇を主張した。だが医学の専門家は、彼がてんかんの発作を起こし、それが幻覚を生んだ可能性を指摘している。この世で最も身近な「未知」は、案外わたしたち自身の脳の中にあるのかもしれない
これらの誤認例は、人間の目と脳がいかに簡単に「見たいもの」を見てしまうかを教えてくれる。空に光を見つけたら、まずは金星か、月か、あるいは誰かの飛行船かを疑うのが賢明だろう。もっとも、正体が割れても、最後の1つが本物である可能性は、まだ誰にも否定できないのだ