競馬の王道路線は芝レースで、2000m前後の中距離から2400m以上の長距離が中心。JRA伝統の大レースもこの分野に集中している。マスコミが大きく取り上げるのも、ファンが最も関心を寄せるのもこの分野だ。最高の栄誉「JRA年度代表馬」も、ほとんどが中長距離馬に与えられている
過去に短距離馬がJRA年度代表馬に輝いたのは、1998年のタイキシャトルのみだった。フランス伝統の短距離GI、ジャックルマロワ賞(1600m)を勝ったことが高く評価されたのだ。短距離馬のスプリンター(1200m前後を得意とする馬)、マイラー(1600mを得意とする馬)がJRA年度代表馬に選ばれるのは、海外遠征で実績を上げない限りは難しい
ロードカナロアはこの難関に挑戦。日本調教馬として初めて香港スプリントを勝ち、翌年も連覇して、短距離馬としてはタイキシャトル以来15年ぶり、史上2頭目のJRA年度代表馬に選ばれた名スプリンターである
父のキングカメハメハは過去に2度、日本リーディングサイヤー(首位種牡馬)に輝いている。芝だけでなく、近年は力のいるダートでも活躍が目立つが、スプリンターの大物は珍しい。一方、母は1200mが得意のスプリンターだった。祖母も短中距離タイプで、米GIを2勝した一流馬だった。スプリンターとしての優れた資質は、この母系の影響を強く受けたのだろう
1200mのデビュー戦を勝利。2戦目の1600m戦、3戦目の1400m戦でいずれも2着に敗れるが、1200m戦に的を絞ると破竹の快進撃を続ける。4連勝で重賞初挑戦の京阪杯を勝利し、年が明けて出たシルクロードSも楽勝で5連勝を飾った
だが、続くGI初挑戦の高松宮記念で3着に敗れ、連勝記録がストップしてしまう。その後もGIII戦、GII戦で連続2着。さすがにこのあたりが限界かと思われ、続くGIのスプリンターズSは2番人気となった。デビュー以来、ずっと1番人気に支持され続けてきた記録は11でストップした
前年の覇者で、最優秀短距離馬にも選ばれた牝馬のカレンチャンに、1番人気を奪われてしまったのだ。だが、ロードカナロアはここ一番になると予想外の底力を発揮する。ハイペースのなか失速することなく脚を伸ばし、ゴール前、そのカレンチャンを退けてGI初勝利を飾った。勝ちタイムはレコード。スプリント王の新旧交代劇を告げるにふさわしい優秀なタイムだった
それを物語るかのように暮れの香港スプリントも、好位から抜け出して快勝。日本調教馬として初の同レース制覇を成し遂げた。しかし、ロードカナロアが本当に強くなったのは翌2013年、5歳を迎えてから。前年、GI初挑戦で辛酸をなめた高松宮記念を同じくレコードで勝利。続く距離が1600mに延びたGIの安田記念も制し、単なるスプリンターではないことを見せつける
秋のスプリンターズSも前年に続いて連覇し、再び香港スプリントに向かう。世界の強豪が集まっていたが、ここでも快進撃は止まらない。後続に5馬身の差をつける圧勝で2連覇を成し遂げた。世界トップクラスの実力を証明したロードカナロアは、文句なしのJRA年度代表馬に選ばれた。冒頭に書いたように短距離馬としては史上2頭目、純粋なスプリンターとしては初の快挙だった
これを最後に引退したロードカナロアには、海外から種牡馬の誘いがいくつも舞い込んだ。血統背景がこれまた世界でもトップクラスだったのである。しかし、高額のオファーを断って日本での種牡馬入りが決まった。初産駒は早ければ2017年夏の2歳戦でデビューする。世界にその名をとどろかせたスピードを、きっと伝えてくれることだろう。分身のデビューが今から待ち遠しい