操縦席にいたのは、第一次大戦で12機を撃墜し、顔面被弾で左目を失って生涯眼帯を着けていたウォルター・ヒンチリフ大尉。同乗者は海運王インチケープ卿の令嬢エルシー・マッケイ。2人はアイルランド沖を最後に消息を絶った。
心霊主義など馬鹿げていると考えていた未亡人エミリーは、藁にもすがる思いで霊媒アイリーン・ギャレットを訪ねる。そこで得られた「夫からの通信」は、驚くほど具体的な墜落の顛末だった。
深夜に暴風雨へ突入し、左の支柱が折れて翼の布が裂けた。針路をアゾレス諸島方面へ変えたが羅針盤が狂い、午前3時に着水。マッケイは意識を失ったまま息絶え、自分は岸へ20分泳いだが力尽きた——。
1982年に亡くなったエミリーの遺灰は、遺言によりアゾレス諸島コルボ島沖に撒かれた。夫が沈んだと「聞かされた」まさにその海域である