知的障害のある人やその家族、支援者で構成される全国手をつなぐ育成会連合会が8月19日、漫画『みいちゃんと山田さん』のアニメ化に対する意見書を公表した
同会は、アニメ化そのものに一律で反対する立場は取らないとした上で、作品や作者及び出版社の過去の言動、「みいちゃん」という言葉が知的障害や発達特性のある女性を揶揄する言葉として使用されている状況などを挙げ、映像化によって知的障害者への偏見や誤解が助長されることへの懸念を表明している
また、アニメ『みいちゃんと山田さん』製作委員会が7月に発表した声明にも言及。 製作委員会が掲げた「アニメーションとして表現する意義」について具体的な説明を求めるとともに、制作に助言する専門家の立場や助言内容、レーティングのあり方についても意見を示した
一般社団法人全国手をつなぐ育成会連合会は、知的障害のある人とその家族、支援者などによる全国組織。 47都道府県の育成会と政令指定都市の育成会が加盟しており、全国の育成会に所属する会員は約10万人。知的障害のある人への理解促進や権利擁護、行政への政策提言、本人活動の支援などに取り組んでいる
今回公表された「『みいちゃんと山田さん』アニメ化に対する意見書」では、同会が「障害者の権利擁護を活動の主軸とする団体」であることを前置きした上で、『みいちゃんと山田さん』について事実関係を確認していたという。 同会は、主人公とされる「みいちゃん」について、作中では知的障害の判定を受けておらず、「明示的に知的障害者であるとはいえません」と説明。 一方で、作品中の描写から「軽度知的障害もしくは境界知能とされる状態であることが強く示唆されている」との認識を示した
また、作者の亜月ねねさんが、軽度の知的障害があり障害者手帳を所持していたと推察される女性を「みいちゃん」のモデルにした旨の発言をしているとも指摘している。 『みいちゃんと山田さん』は、2012年の新宿を舞台に、キャバクラ嬢の山田さんと新人・みいちゃんを中心に描く漫画。講談社の漫画アプリ「マガジンポケット」で連載され、2027年のアニメ化が決定している
意見書では、アニメ化をめぐって懸念を抱く理由として、作者・亜月ねねさんと、版元である講談社の編集者による過去の言動を挙げている。 同会が確認したものとして、吃音のある人物がその特性から社会生活上の困難を抱える状況を扱った作品、認知機能/知的機能が低下した状態を「みいちゃん化」と表現した事例、作者が以前使用していた「ダイアナ」名義で特殊学級(特別支援学級)をネガティブに捉えた作品などを列挙
また、『みいちゃんと山田さん』の出版社である講談社の編集部員が、過去に公開された動画の中で、人の不幸をエンターテインメントとして楽しむことに肯定的とも取れる発言をしていたとも指摘している。 その上で同会は、これらの言動について、知的障害が強く想起される「みいちゃん」や障害者の人格/個性を尊重しているとは言い難く、「面白おかしく」扱った上でエンターテインメント化している、あるいはそれを容認しているのではないかとの懸念を表明した
また、全国手をつなぐ育成会連合会は、アニメ化をめぐるレーティングについても意見を表明。 アニメ『みいちゃんと山田さん』製作委員会は7月27日に発表した声明で「適切なレーティングや注意喚起を記載する」としている
これについて全国手をつなぐ育成会連合会は、レーティングは一般的には視聴推奨年齢を設定する仕組みであると説明。 さらに「少なくとも地上波放送ではないこと考えられますが、本会としては未成年者が気軽に視聴できる環境は望みません」として、“適切なレーティング”を希望している
今回の意見書で重要なのは、全国手をつなぐ育成会連合会が『みいちゃんと山田さん』のアニメ化そのものを否定しているわけではないことだ。 同会は表現の自由が憲法によって保障された権利であることを踏まえ、 「本会として一律に映像化を反対する立場は取りません」 と明記している
その上で、知的障害のある人々の権利擁護を担う立場から、作品や作者・出版社をめぐる言動、そして「みいちゃん」という呼称が現実社会で蔑称として使用されている状況に懸念を示し、製作委員会に慎重な対応を求めている。 『みいちゃんと山田さん』は、社会や福祉制度からこぼれ落ち、孤独や貧困、搾取の中で生きる女性を描いた作品として支持される一方、その描き方が知的障害や発達障害のある人々への偏見や差別感情を強めるのではないかという批判も受けてきた
アニメ化発表を契機として、議論は『みいちゃんと山田さん』という作品の表現だけでなく、障害を持つ人物をフィクションはどう描くべきか、その表現が現実社会でいかに受容/消費されるのかという問題へと広がっている