河野誠は地下鉄の駅員だった。彼の担当は深夜の最終電車が出た後の構内巡回だった。誰もいなくなった地下の駅は、不思議な静寂に包まれる。足音だけが響く世界。 彼が地下鉄の仕事を選んだのは、「地下」という空間に惹かれたからだった。地上の喧騒から離れた別世界。そして何より、そこには「足」しかなかった。 誠は子供の頃から、人の顔よりも足に興味があった。足は人の本質を表すと思っていた。慌てた足取り、ゆったりとした歩み、引きずるような足音。すべてがその人の内面を映し出していると。