暗い通路の突き当たり、非常口の前に立っていたのは、先日の老人だった。しかし今夜は一人ではなかった。十人ほどの人々が集まっていた。老若男女、様々な服装の人々。しかし全員に共通していたのは、その影だった。皆の影が、本人とは違う足を持っていた。二本ではなく、三本、四本、中には数え切れないほどの足を持つ影もあった。
「来てくれましたね」と老人は誠に微笑みかけた。「今夜、私たちは扉を開けます」
老人は非常口を指した。「この先には階段があります。しかし、それは上でも下でもない方向に続いています」
誠は混乱した。「どういう意味ですか?」
「私たちの足は二本。しかし影の足はそれ以上ある。なぜだと思いますか?」
...もっと見る老人は続けた。「私たちは歩みます。しかし実際に道を作るのは足ではなく、影なのです。影の足は、可能性の数だけあります。私たちが選ばなかった道を、影の足は歩いているのです」