次の日、師匠があっさり教えてくれた。
「あのダムはね、30日ごとに試験放流をするんだ」
その周期と満月の周期とがたまたまかぶっているというのだ。
月の満ち欠けが一周するまでの期間を朔望月といい、平均するとおおよそ29.53日。
30日ごとの試験放流では一年間で6日ほどズレが生じるはずだが、放流予定日が休日だった場合はその前日に前倒しする
ことになっており、その周期が朔望月に近づくのだという。
「でもぴったり満月の日にあの沢が湧くのはめずらしいらしいけどね」
力が抜けた。地下水の圧力変化の原因は潮汐力ですらなく、ただのダムの放流だった。
ようするに担がれたわけだ