そして重要なのは、サン人が暮らしていたカルー盆地には、このディキノドンの頭骨などの化石が現在でも数多く転がっているという事実だ。
「多くの文化は、西洋の科学者が化石を研究するずっと前から、化石の世界を探求していました」とブノワ博士は語る。実際、考古学的な証拠からも、サン人が陸路を長距離移動して化石を拾い集め、運んでいたことがわかっている。彼らがディキノドンの頭骨を見つけ、その「2本の牙」から生前の姿を想像(復元)し、岩壁に描いた可能性は十分にあるのだ。
1905年の記録にも、サン人が「ゾウやカバよりも巨大で怪物のような獣」に祖先が遭遇したという神話を語り継いでいたことが記されている。彼らは足元の地面から見つかる巨大な骨を見て、かつてこの大地を支配していた「絶滅した怪物たち」の存在に気づいていたのである