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1: アセム雨宮◆UD16NvPYxY
2026-08-04 08:47:43 OMPVG0082

「呪いの品」を名乗るオカルトアイテムは世界に無数にあるが、その大半は真偽の検証もされないまま語り継がれていく。だが、ハリウッドで映画化までされたある呪物は違った。

 創作であることを、生みの親本人が10万ドルの賞金つきで認めてしまったのだ。それでも箱は今、ラスベガスのガラスケースの中で客を集め続けている

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2: アセム雨宮◆UD16NvPYxY
2026-08-04 08:48:11 OMPVG0082

 発端は2001年。オレゴン州ポートランドで古物商と家具修復業を営むケビン・マニス氏が、遺品整理のセールで小さなワインキャビネットを手に入れた。

 2003年、彼はこれをeBayに出品する。異様だったのは商品説明だ。ポーランド出身のホロコースト生存者で103歳で亡くなったハヴェラという女性の遺品を孫娘から譲り受けたもので、故人は生前この箱に「ディブク」を封じていたのだという

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3: アセム雨宮◆UD16NvPYxY
2026-08-04 08:48:32 OMPVG0082

ディブクとは、ユダヤ教の伝承で安らぎを得られなかった死者の魂が生者に取り憑き、苦しめるとされる霊のことだ。

 出品文には、入手後に降りかかった災難が延々と綴られていた。家族が同じような悪夢を見る。影が現れる。箱を置いた部屋に猫の尿のような臭いが充満する。留守中の従業員がパニックに陥り、実母が脳卒中で倒れる——。

 そして文章は「助けてくれ」の一言で終わる。中身は硬貨2枚、2色の毛髪、「シャローム」とヘブライ語で刻まれた小像、ゴブレット、乾いたバラ、タコの脚めいた燭台だと記されていた

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4: アセム雨宮◆UD16NvPYxY
2026-08-04 08:49:00 OMPVG0082

落札したのはミズーリ州の学生イオシフ・ニーツケ氏。彼はほどなく手放し、箱はA.T.スティル大学のオステオパシー医学博物館館長ジェイソン・ハクストン氏の手に渡る

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5: アセム雨宮◆UD16NvPYxY
2026-08-04 08:49:19 OMPVG0082

 ハクストン氏は自身に起きた出来事を数年かけて記録し、2011年に『The Dibbuk Box』を出版。箱をアカシア材に金を張った櫃へ封じ、最後は装甲コンテナごと秘密の場所に埋めたと書いている。

 この本に目を留めたのがハリウッドだった。サム・ライミ製作、オーレ・ボールネダル監督のホラー映画『The Possession』(2012年)である。

 コンサルタントとして立ち会った撮影現場では、照明が理由もなく破裂し、終了の数日後には火災でセットや小道具の一部が焼失したと語られる。劇中で使われた箱のレプリカは、それきり見つかっていない。

 2016年、ハクストン氏は箱を心霊調査番組「ゴースト・アドベンチャー」の司会者ザック・バガンズ氏へ譲渡。金額は非公開だ。箱はラスベガスのホーンテッド・ミュージアムに収蔵され、観覧には免責同意書へのサインが求められる

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6: アセム雨宮◆UD16NvPYxY
2026-08-04 08:49:49 OMPVG0082

潮目を変えたのは、専門誌による地道な検証だった。

 米誌スケプティカル・インクワイアラーの調査ジャーナリスト、ケニー・ビドル氏は2018年に博物館を訪れ、この箱を精査した。結論は身も蓋もない。ポーランド由来の古い箱などではなく、ニューヨークのロバート・B・カロフという業者が市販していたバーキャビネットだというのだ

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7: アセム雨宮◆UD16NvPYxY
2026-08-04 08:50:15 OMPVG0082

 さらに彼は、展示中の箱の木目と背面の花崗岩板の形状が、マニス氏が公開した初期の写真と一致しないとも指摘。レプリカが出回っている可能性がある。

 だが決定打は本人の口から出た。2015年10月24日、マニス氏はFacebookページ「Haunt ME」への投稿で、この話は2003年の出品にあわせて自分がゼロから作り上げたものだと明言する。

 そのうえで、自分より前に「ディブク・ボックス」という言葉が使われた記録を見つけた者には10万ドルを払い、おまけに自分の額へその人物の名前をタトゥーで入れさせる、とまで書いた。

 2021年にも米誌インプットの取材に同じ告白を繰り返し、背面の彫刻も添えられた石も自作、名称も設定も演出もすべて一から組み立てたのだと語っている。

 宙に浮くのは、ハクストン氏やバガンズ氏の身に起きたとされる出来事だ。だが明確な答えを出した検証は見当たらず、ハクストン氏の著書自体、憑依を断定せず判断を読者に委ねて終わっている

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8: アセム雨宮◆UD16NvPYxY
2026-08-04 08:50:32 OMPVG0082

 バガンズ氏も告白で一件落着とは認めておらず、箱は今も博物館の目玉だ。なおこの物語には当初から、ホロコーストの記憶やユダヤ教の伝承を創作の材料に使うことへの懸念も示されてきた。

 作者が自ら種明かしをした呪物が、10年を経てなお値打ちを保ち、免責同意書つきで人を集めている。取り憑いたのが霊であれ一編の作文であれ、動き出した物語は生んだ人間の手を離れ、他人の人生に居座り続ける。ディブクとは本来、そういう存在だったはずだ

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