もちろん、科学者たちは「這い寄る宇宙スライム」だなどとは考えていない。彼らは、火星特有の強力な「風」がこの現象の鍵を握っていると確信している。
しかし、そのメカニズムについてはESAの専門家たちも首を傾げたままだ。「現在、2つの仮説がありますが、どちらが正しいかは全く分かっていません」という。
一つ目の仮説は、「黒い火山灰そのものが、風に乗って周囲に撒き散らされている」というもの。二つ目の仮説は、「元々広範囲にあった黒い地層の上に赤い砂埃(黄土色のダスト)が被さっていたが、それが風で吹き飛ばされて『黒い下地』が露出してきている」というものだ。
日本の感覚で言えば、砂場の上に薄く積もった雪が風で飛ばされて、下の黒い土が見えてきているような状態だろうか。どちらにせよ、火星の過酷な気象環境が引き起こしているダイナミックな現象なのかもしれない