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1: アセム雨宮◆UD16NvPYxY
2026-07-17 15:05:47 OMPVG0082

これは私が幼い頃・・・その日は祖母と一緒に海水浴を楽しんでいた。
犬のお散歩させてる近所のおじいちゃん。
ジョギングしてるお隣のお姉さん。
遠くで潮干狩りしてるおばちゃん達。
何の変哲もないいつも通りの日常の中で、ぼーっと海岸線の蜃気楼を眺めていた。
この日の蜃気楼は随分と大きくてやけに近くに見えるものも幾つもあって興味を抱いたから。
すると隣でビーチバレーをしていたお兄ちゃん達から随分と怖ろしい怪談を聞かされたのを覚えている。
当時は泣くほど怖かったけれど悔しいことに内容をよく覚えていない。
ただ直後に強烈な不安にかられこう叫んだことを覚えている

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2: アセム雨宮◆UD16NvPYxY
2026-07-17 15:06:10 OMPVG0082

『ねぇねぇ、おばあちゃん!アレただの蜃気楼だよね?本当に蜃気楼だよね?怖くないよね?』

私が質問したその瞬間。
一緒に居た祖母が向き直ると顔面蒼白になって『今見たものは忘れなさい!』そう言って私の目を手で覆った。

『どうしたのおばあちゃん?』

返事がない。
祖母は表情が固まったまま私を抱っこして早足に砂浜から遠ざかっていく。
私は祖母の指の間から再び海を覗いた。
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3: アセム雨宮◆UD16NvPYxY
2026-07-17 15:06:49 OMPVG0082

いきなり地獄みたいに真っ赤になってしまった海と、まるでのたうち回る蛇のような蜃気楼が私達を追い掛けてきているように見えた。
後日、この日の出来事について何度か祖母に問い質したけれど何も答えてくれなかった。

それから時は過ぎ私が20歳の頃。
昔と変わらず祖母は優しい。
料理上手で気立て良く頼りになる自慢のおばあちゃんだ。
けれどあの日以来、祖母は二度と私を海へは連れて行ってくれなくなった。
祖母だけでなく父母や祖父も私が『たまには海に行かない?』と言うと露骨に話をそらす。
それだけではない。
家族旅行する日程が入っていても旅先が海や海の近く、或いは海外旅行などの場合、当日になるとなぜか宿泊先の予約ミスをしただとか、旅行券を失くしたとか、車が故障したとかワザとらしいドタキャンが入る。
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4: アセム雨宮◆UD16NvPYxY
2026-07-17 15:07:13 OMPVG0082

当時私はもう10年近く現実の海を見ていなかった。
だから紀行番組で絶海の孤島などが特集されるとついつい見入ってしまうんです。
禁止されるとかえって情熱が燃え上がっちゃう例のアレです。
でも家族は私が席を離れた途端何か良くないものであるかの様にチャンネルを変えてしまうんです。
あの日私が見たものが一体何だったのか。
なぜあの時急に砂浜がおかしくなって周囲の人達が昏倒したのか?
なぜウチの家族はそれ以来みんな海をこうも極端に避けるのか。
そして何も語らないのか。
ずっとそれが謎でした。
けれどその理由にようやく気付いた出来事がありました。
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5: アセム雨宮◆UD16NvPYxY
2026-07-17 15:07:34 OMPVG0082

けれど流石に家族に負い目があって録画に踏み切ったことはありませんでした。
当時はまだスマホもYouTubeも無かった時代です。
念には念を入れ怪しまれぬ様深夜の再放送を狙いました。
そして翌日の深夜。
私は自室でナンマトルの空撮映像に食い入る様に何時間も見惚れていました。
その時です。
何度も何度もビデオを再生していると、画面の端に妙な砂嵐がチラついてきました。
ビデオデッキもテープもテレビも新品だったので初期不良を疑いましたが、他のテープを再生しても何も異常は見られません。
運悪く録画したテープだけが初期不良だったのかと落ち込みました

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6: アセム雨宮◆UD16NvPYxY
2026-07-17 15:07:53 OMPVG0082

けれどこの程度の砂嵐どうということはないと思い直し視聴再開しました。
しかし砂嵐はどんどん酷くなります。
『参ったな。
今度ビデオ屋でダビングしてもらおうか?』
そんな事を思案していると、ある事に気付きました。
似ている。
そう、あの時の蜃気楼に・・・
気付いた途端、砂嵐は急に巨大化しました。
間違いない!
こちらが蜃気楼の存在に気付いたことで向こうもこちらに気付いたのでしょう。
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7: アセム雨宮◆UD16NvPYxY
2026-07-17 15:08:25 OMPVG0082

ようやくテレビは消えました。
私は放心状態で天井に貼ったソロモン諸島やパラオなどの航空写真ポスターを眺めていました。
『やっぱ映像ですら駄目なのか。
私にはもう一生涯海の映像を楽しむことすら許されないんだ・・・』
そういった暗澹たる想いが込み上げてきた時です。
ポスターに染みのようなものを見付けました。
それは徐々に広がっていきます。
あの蜃気楼でした。
そいつと目(?)が合ってしまった瞬間。
私は気が付くとパラオの青い海を俯瞰していました。
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8: アセム雨宮◆UD16NvPYxY
2026-07-17 15:08:44 OMPVG0082

『ああ、こんな綺麗な感じなんだ。
私はこれを味わいたかったんだ。』
その時です。
何かを破り裂く音で私は目覚めました。
箒を持った両親と祖父母が心配そうな顔で私を取り囲んでいました。
天井のポスターはビリビリに裂かれていました。
この時、やっと家族の真意が分かりました。
詳しく話すことは出来ないけど、ずっと守ってくれていたんだなってようやく理解しました。

今では海とは無関係な職場で元気に働いています。
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9: アセム雨宮◆UD16NvPYxY
2026-07-17 15:08:58 OMPVG0082

あの赤い海(もしかしたら緑がかった赤色だった気もする。)と蜃気楼は一体なんなんでしょうね。
家族から聞いた話でもこれらの存在の詳しい正体までは分かりませんでした。
神的精霊的な存在なのか。
世界には人を眠らせたりあの世に連れ去る精霊や神々の伝説もあるそうですし

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10: アセム雨宮◆UD16NvPYxY
2026-07-17 15:09:46 OMPVG0082

ちなみに砂浜で倒れてたお隣のお姉さんは生きてました。
命まで取られた訳ではないようです。
他の人達も多分大丈夫だろうとは思うのですが

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